軍人とは一体何だったのか

ミリタリージョーク
比較的涼しい夏の夜でした。

 

今、見ている世界のことについて、一瞬疑問が生じました。

 

その夜、それまで心を捉えていた世界とは違ったモノの見方や考え方があるのではないかとなぜか頭に過ぎったのです。

 

でも、それはあまりにも現実離れしていて、強い不安感が込み上げてくるものでした。

 

やはり、今の日常をそのまま生きることが尊いのだと心に言い聞かせたのです。

 

そちらの方が安心し、スッと眠りに付くことができました。

 

この何気ない体験を、その後の自分がとりわけ強く思い出し、重要視するに至ったのは一言で言えば、悔しいという感情が強く吹き出す瞬間だったからだと思います。

 

一時的に頭を過ぎったこと、そこで一瞬だけ胸に湧いた疑問と考えは間違いではなかったと、そう思うからです。

 

目の前の現状以外のことについて深く考えることもなく、信じていた世界観をさらに盲目的に信じて、そしてそれが心の安定につながっていたあの当時に、なぜ全く別のことを考えようとしなかったのか。

 

なぜ、その勇気がなかったのか。

 

その勇気があれば、私は全く違う道を取っていたかもしれない。

 

そう思うと、胸の締め付けられる思いとともに、強い後悔が込み上げてきたのです。

 

軍服で身をまとった兄は、その世界を心から信じていました。

 

そこには一点の曇りもなく、まっすぐに前を見つめていました。

 

そして、その心のままに死んでいきました。あの大東亜戦争の戦死者となりました。

 

私は兄を心から尊敬していました。他の誰よりも兄を尊敬していたと思います。

 

私は兄の後を追うようにして生きていました。

 

その兄が戦争で亡くなったこと、兄が最後まで軍人としての役割を完遂したこと、そのことについてやはり私の兄だとどこかで感じる一方で、兄を失いたくなかった。

 

なぜに、このような戦争に兄が行かなければならなかったのか!

 

と叫びたくなる気持ちが何度も噴き出す経験をしました。

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